修学旅行の話

修学旅行と言えば、男子はみな女子部屋に行きたいものだと思う。
かくいう僕も、なんとか女子部屋に潜入しようと画策していたが、男子と女子の部屋の間は教員たちの部屋であったため、
その前の廊下を歩こうものならすぐにつかまって正座させられてしまうこと必至であった。
 
我々、男子軍は無い知恵を振り絞り、ベランダ越しに潜入することにした。
当然、ただベランダを歩くだけでは見つかってしまうので、ベランダの"更に外側"という危険な道を通ることとなるのだが、
幸い、そのホテルはベランダの外に人間が一人歩ける程度の出っ張りがあったため、
皆からだを縮めて進んでいくのであった。
 
男子部屋のエリアを超え、いよいよ教員たちの部屋のゾーンに潜入する。
いっそう気を引き締め、ゆっくり、ばれないように行進する男子軍。
 
そのとき、緊張の糸がふと切れてしまったのか、O君が顔を上げて教員部屋の中をのぞいてしまった。
その部屋は英語のT先生という、若いが、大変厳しい教員の部屋であった。
 
O君はすぐに身をかがめたのだが、O君は青ざめた表情で我々を見た。
 
「ばれてしまったか・・・?」
 
慌てて元来た道を引き返し、男子部屋へ戻った我々であったが、T先生が追いかけてくることはなかった。
 
「O君、先生に見られたの?」
「いや見られてない」
「じゃあなんで慌てて戻ったの?」
 
「いやあの先生、鏡の前で全裸で乳首にムヒ塗ってたんだよ」
 
 
その後、その噂は瞬く間に広まり、T先生がギャルたちに変態人間ムヒと呼ばれ続けたのは言うまでもない。